年頭所感 経済産業省製造産業局長 細野 哲弘氏

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年頭に寄せて
製造業の皆様には
粘り強い挑戦を続け、
中長期的にも成長の牽引役を
担うことを期待

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経済産業省製造産業局長
細野 哲弘氏

 平成21年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
 日本経済は今、大きな転換期を迎えております。御承知のとおり、昨年秋から米国に始まる金融混乱が急速に世界経済全体に大きな波となって伝播し、世界同時不況の様相を呈しております。そして製造業に携わる皆様の事業活動にも、大きな痛みを伴う結果をもたらしつつあります。今、眼前には、資源・環境制約の高まり、国内人口の減少、急激な為替変動など、外部環境の構造的変化による課題が山積しております。
 現下の経済情勢は厳しいものの、今こそ、日本は底力を存分に発揮し、いち早くこの世界同時不況から脱さねばなりません。そしてまた、世界中の範たる国家となるため、資源生産性を高め、低炭素社会を同時に実現するという、新たな成長のメカニズムを構築せねばなりません。本年、経済産業省は不退転の覚悟で臨みます。
 明るい未来を実現するには、しっかりとしたヴィジョンを持つことが重要です。昨年、経済産業省では、我が国経済の発展に向けた羅針盤になるように、との思いを込めて「新経済成長戦略2008改訂版」をとりまとめました。しかし、ヴィジョンの実現には、それを着実に実行していく信念と着実な努力が必要です。つきましては、本年も我が国製造業の皆様には、粘り強い挑戦を続け、中長期的にも成長の牽引役を担うことが、期待されております。
 こうした認識に立って、製造業の皆様を身近で応援する立場にある、我々製造産業局としましては、以下のような施策に果敢に取り組んでまいります。
 第一に、次世代産業群の創出を推進します。我が国のものづくりの強みは、優れた素材産業の力と技術力に基づく高い信頼性にあると言われます。代表的な産業としては、まず、製造業全体への波及効果の高く、「産業の総合力」が試される次世代環境航空機、先進的宇宙システムが挙げられます。昨年はYS11以来、約半世紀ぶりに、国産旅客機の事業化が決定されました。また、「宇宙基本法」が成立し、いよいよこれから我が国においても宇宙の利用が本格化し、これを支える関連産業が確固たる力を発揮することが期待されます。今後も、我が国が優位性を誇る素材・部材分野の強みをいかして、これらの産業が世界トップレベルの競争力を持つことができるよう支援してまいります。
 また、バイオ分野での産業応用の支援が挙げられます。バイオ分野では、iPS細胞だけでなく、将来産業化の可能性がある技術がたくさんございます。昨年はスーパー特区の第一弾として、先端医療開発特区に関する話を関係省庁と進めました。今後も、バイオ分野の技術を関連産業への応用が可能となる仕掛けに挑戦してまいります。
 そして、次世代自動車の開発・普及事業も重要だと考えております。次世代自動車の開発・普及は、低炭素社会の実現にも貢献します。また、次世代自動車の開発・普及に併せて、ITSの実用化による安全性の更なる追求にも取り組んでまいります。
 経済産業省は今年、イノベーション創造機構を設立いたします。これまで我が国では、立派な研究は行われているのに産業と結びついていない、リスクマネーが少ないために新たな挑戦を受け入れられていない、という声がございました。しかし、今後はイノベーション創造機構の活用により、バイオや化学などの分野で、研究開発をビジネスチャンスにいかせるようにいたします。その結果、我が国でもどんどんイノベーションを起こし、新規事業を増やし、競争力の向上を目指します。
 第二に、資源・環境制約を所与とすることなく、製造業が更なる成長を遂げられるよう、技術開発や資源確保を進めてまいります。昨年、北海道洞爺湖サミットにて総理が御発言されました通り、我が国は「低炭素社会」の実現へ向けて、着実に歩みを進めねばなりません。また、地球上の資源が有限である限り、資源生産性も高めていかねばなりません。そのため、環境調和型の製鉄プロセスの技術開発や、希少金属の代替材料開発、持続可能な省エネ・省資源型化学プロセスの構築、電気自動車の導入促進、低燃費・低騒音航空機の技術開発など、「革新的技術」の開発を推し進めてまいります。
 他方、我が国製造業の国際競争力を確保するため、鉄鋼原料やレアメタル・非鉄金属などの資源確保を精力的に進めていくことが重要です。このため、積極的に資源外交を展開するとともに、我が国企業による海外の資源権益確保や探鉱・開発等を支援してまいります。
 第三に、安全・安心な経済社会の構築を実現します。経済が発展するためには、国民一人一人が安全に、安心して暮らせることが大前提であります。すでに、我が国は少子高齢社会を迎えております。国民の皆様が少しでも安心して暮らせるように、これからはますます医療・福祉へのニーズは高まるでしょう。そこで製造産業局としましては、生活支援ロボットの実用化を図るため、研究会を開催し制度的・技術的問題を集中的に議論するとともに、技術開発も行うこととしております。また、昨年は妊婦の方が病院に運ばれる際に亡くなるという出来事もございました。今年はそうした問題が二度と生じないよう、車載ITシステムを搭載した緊急医療体制の整備に、他省と連携をとりあって力をいれてまいります。
 また、安全・安心は、普段の生活の周りにのみ求められるものではなく、生産現場においても求められるものであります。工場で製品を生産する際、様々な化学物質が利用されています。化学物質による、人体や環境へのリスクを最大限抑えるため、また、欧州で新たに導入されたREACH規制等の国際的な動向も踏まえ、我が国でも化学物質の管理・審査の方法を見直します。
 第四に、「感性価値創造」の促進と、国際発信力強化に資する施策を積極的に支援してまいります。未来の社会を見据えた日本の新たなものづくりの価値軸として、作り手と使い手の感性による「共創」や、環境と調和するものづくりなど、伝統と文化に裏打ちされた日本人の豊かな「感性」をいかしたものづくりによる高付加価値や差別化を実現しようという「感性価値創造」を、ものづくり施策の横断的施策として位置づけております。具体的には、平成20年度〜22年度を「感性価値創造イヤー」と名付け、平成20年度から国内外各地でセミナーや「感性価値創造フェア」の開催を行っております。「感性価値創造」により、ものづくりを行う人のこだわりや、ものづくりにかける思いが消費者一人一人に届くようになれば、と考えております。
 また、国際発信力の話では、ファッション分野における日本のプレゼンスの向上を目的とした、「東京発 日本ファッション・ウィーク」がございます。今年5年目を迎えるイベントですが、今後は中身の充実も図りながら、ビジネスとして、独り立ちできるよう努めてまいります。
 他にも、製造産業局では、「ものづくり日本大賞」の実施により、「ものづくり人材」に光を当てた施策や、生活関連産業の国際展開に加え、模倣品・海賊版の拡散を防ぐためにACTAの早期妥結へ向けての交渉に対し、今年も積極的に取り組んでまいります。
 我々経済産業省が、経済産業省たるゆえんとしましては、日本経済を支える産業界の皆様との対話を通じて、日々政策を練り上げることができるところにあると考えております。足下の情勢は決して容易ではありませんが、引き続き皆様との実のある意見交換を通じて建設的で明るい展望を開くことができるよう努力してまいります。
 最後になりましたが、本年の皆様方の御健康と御多幸をお祈りいたしまして、新年のごあいさつとさせていただきます。